海の恵みをよみがえらせる水質浄化剤の開発へ
地元有明海の生態環境の悪化がきっかけに
コンクリートブロックの製造で創業し、近年は事業領域を広げるため、環境に配慮した付加価値の高い製品の開発に力を入れています。
水質浄化剤の開発もその一環で、下水汚泥や間伐材などの腐食物質からできるフルボ酸が鉄やシリカとの結合で効果を発揮するのでは、との仮説から始めました。干潟として日本有数の有明海は生育環境の悪化によって多くの魚介類の漁獲量が減少しています。古賀雅之会長には「即効性が高く広範囲で活用できるものができれば」との思いがありました。

実証試験と並行した試作品開発の生産体制整備
社内の技術顧問を通じて福岡大学の渡辺亮一教授と知り合い、浄化メカニズム解明の共同研究を始めました。理論上、山地で長い年月をかけてできる腐食物質は栄養分となって川を流れ、海の水質浄化につながると言われてきました。それらをダムや
水質浄化剤の開発のため、2012年から筑後中部魚市場(柳川市)の魚介類を対象にした検証や地元有明海の干潟での実証試験を開始。同時に試作品開発などのため、ペレット状に造粒する機械や袋詰め装置、封入用ミシンを導入しました。

いけす用水質浄化剤の製品化と実証のさらなる広がりへ
環境改善効果の検証を進めるうち、フルボ酸鉄シリカが魚介類のふん尿から発生するアンモニアや亜硝酸など毒性を持つ有機物を分解してケイ素に変化することが分かってきました。その仕組みを基に、2014年には鮮魚店や飲食店などの循環式いけす用水質浄化剤「龍宮の遣い」として製品化しました。実地での検証もさらに広がっています。2015年から熊本県長洲町の干潟で進めている実証では、フルボ酸鉄シリカを入れた分解性土のう袋を設置すると、ヘドロが浄化され、アサリの生息が減った漁場で採取量が増える効果も確認しました。現在は1万平方メートルまで規模を拡大して効果検証を進めています。

開発と実証の両輪立てによる展開へ
設備導入で変化したことはありますか?
以前から開発を実現させたいと考えていました。補助事業の活用で具体的な形が整いました。今後、本格的な量産化に向けた基盤づくりも視野に入れています。
開発した水質浄化剤はどうやってできるのでしょうか?
水分量や温度を管理し、約6カ月かけて再発酵して自然界のメカニズムに近い状態にしています。その後、遠心分離機やフリーズドライ装置を利用して成分分析し、造粒機でペレット状に仕上げてます。
成果を基に今後、どんなことに力を入れていきますか?
有明海で取り組みが成功すれば日本各地で広がる可能性も高まります。干潟再生に向けた協議会も立ち上げ、産学官のネットワークを生かし、今後も実証を進めていきます。

ここがポイント
- 実証のさらなる広がりが推進力に
- 産学連携の取り組みに合わせて設備導入が進んだことが、ニッチな製品ができるきっかけの一つとなりました。実証研究の幅も広がるなど、地元有明海から全国各地の水産資源の再生へさらなる可能性が期待されます。

会社概要
- 代表者
- 代表取締役 古賀 大貴
- 所在地
- 〒835-0006
福岡県みやま市 瀬高町坂田169
- TEL
- 0944-63-3133
- FAX
- 0944-63-6211
- 業種
- 水質浄化剤などの開発・製造およびエクステリア設計・施工
- 資本金
- 1200万円
- 創業
- 1960年4月
- 社員数
- 6人
