地場産業の伝統を守り続けるため生産性向上へ挑戦
花ござづくりの担い手減少から生じた増産体制の構築
筑後地域がい草の一大産地だったことから地場産業として発展してきた「花ござ」。同社は3代続く織元として、各地のメーカーへ供給しています。
時代とともに周囲で織元の廃業が進みました。以前から自動織機の導入によって生産体制を強化してきましたが、花ござを作る担い手が減る分、取引先から1度に受けるオーダーの量が増えました。そして増産への体制づくりとともに、より複雑な柄の製造にも対応可能な設備の刷新に取り組むことになりました。

現場の生産性を検証しながら進めた最新式織機の導入
数多くの織機が並ぶ現場に導入したのは、ジャカード式花ござ用自動織機4台。USBメモリーに取り込んだ織り柄のデータを反映して製造できるのが特徴です。従来の織機と比べて織り込む際に経糸を多く使うため、より複雑な柄を作れるようになりました。
「導入当初からエース級で稼働している」と語る松永正晴社長。導入前には既設の織機との生産性を比較検証しました。他の織機と比べてもコンパクトで、織機独特の作業音が小さくなり、作業環境も改善しています。

生産能力向上にも生産プロセス全体の効率化にも波及
導入前の課題だった生産性は従来の織機だと5台で賄っていたものが4台で対応可能となり、製造原価低減につながりました。織機の性能向上で品質も高まり、検品や出荷にかかる時間を減らす効果も生んでいます。
複雑な柄を作り出す上ではUSBメモリーでデータを反映できることがプラスとなっています。かつては取引先から送られるフロッピーディスクのデータを元にしていたため、サンプル品を作るにしても時間を要していました。今ではメールのやりとりでデータの反映が可能となり、生産プロセスの改善にもつながっています。
今後は自社でできる加工の範囲を広げ、日本製の強みを生かした付加価値の高い製品の開発にも取り組んでいきます。

会社や業界を見つめ直すきっかけに
設備導入を機に会社に対する見方が変わったようですね。
以前は日々の仕事に追われる中で自社を客観的に見る機会がありませんでした。設備導入で会社の現状や課題を見つめ直す時間が確保され、やりたいことが明確になりました。
具体的にどんな点が見えてきましたか?
日本製に期待する消費者のニーズに対して品質やデザイン性を求めるモノづくりが大事だと感じました。同時に営業力や現場での生産性などの課題も見えてきました。
今後、業界の変化に対してどんな点に力を入れていきますか?
中国製品が流通する一方、日本国内では分業制で成り立ってきた花ござの生産体制の維持が難しくなってきました。将来に向けて生産から販売までの過程がスムーズになるように取り組みます。

ここがポイント
- 地場産業伝承への新たな可能性
- 設備刷新による生産性向上が当初の狙いでしたが、会社の方向性を定めるきっかけにもなりました。その後も現場の改善に継続的に取り組むなど、地場産業の伝統を守り続ける取り組みを進めています。

会社概要
- 代表者
- 代表取締役 松永 正晴
- 所在地
- 〒832-0007
福岡県柳川市 金納207-1
- TEL
- 0944-73-1252
- FAX
- 0944-74-3040
- 業種
- い草製品の製造
- 資本金
- 300万円
- 創業
- 1948年
- 社員数
- 10人
