システムで高品質な日本酒と従業員の時間を生み出す

酒質を左右して人の負担が大きかった温度管理をシステム化する

創業の文政元年(1818年)から培ってきた技術を守りつつ、社長をはじめとする若い感性を生かした酒造りに取り組んでいます。こうじもろみの温度をテーマにしたシステム化に乗り出したのは、温度管理こそ品質を大きく左右する要素で、作業者の負担が大きかった業務だったからです。またシステム導入は伝統的な杜氏とうじ制による酒造りから新しい形の酒造りを目指す一環でもありました。

どこでも温度を確認。温度調整しやすいようタンクを小型化

酒造工程での温度管理は、麹や醪そのものが発する熱と気温を注意しながら、氷や水を使う調整です。その精度は0.5℃の差。あらゆる作業工程で何度も温度を測ります。管理が特に重要な時期は徹夜で温度をみて寝不足になるのが当たり前の世界でした。
導入したシステムは離れた場所でも複数あるタンクごとの温度がリアルタイムで分かり、記録します。グラフ化が可能で、温度変化が分かりやすく、予測にも活用できます。囲んだパイプに水を流して温度調整ができるタンクは、調整しやすいように小型化しました。

負担が軽減され、情報共有が一体感を生む

システム導入でスマートフォンなど携帯端末で温度確認ができるようになりました。それには温度を測る手間を減らすとともに情報共有を進めたいとの思いがあります。かつての温度管理は、測るために手洗いや着替えが必要で杜氏に任せきりでした。今では休憩時間でも確認でき、複数での情報共有が可能です。従業員の一体感が高まり、温度や天候の予想に合わせて今後の対応を話し合うようになっています。
杜氏の退職による酒質の変化で固定ファンが一時離れたこともありました。ですが温度管理の高度化で品質を維持、向上させて全体の売り上げはすぐに盛り返しています。2018年の第7回福岡県酒類鑑評会では純米吟醸酒・純米酒の部で福岡県知事賞と金賞を受賞しました。

人が考え、育ち、働き続けられる会社に

補助金を使った理由を教えてください。

自己資金や融資でもシステムを作れたでしょうが91年の台風で大きな被害を受けた経験から、使える制度は活用したいと考えるようになりました。

システムを運用していかがですか?

会社が大きな節目の時期でタイミングが良かったです。設備業者のアドバイスもあり、さまざまな機器を組み合わせることで当社にちょうどよいシステムができました。

システムをどのように生かしていきますか?

できた時間で勉強できるようにしたいです。人が考えて育つ会社にしたいと思っています。従業員がずっと働ける会社にするために努力します。


ここがポイント

コミュニケーションを密にして現場に合うシステム
システムの整備では設備業者とコミュニケーションを取り、目指す酒造りや生産の規模に合ったシステムにしました。酒造工程を良く知る施工業者だったためコストを抑えながらのシステム構築も実現しています。

会社概要

山の壽酒造株式会社
代表者
代表取締役 片山 郁代
所在地
〒830-1125
福岡県久留米市 北野町乙丸1・2合併番地
TEL
0942-78-3025
FAX
0942-78-4673
URL
http://yamanokotobuki.com/
業種
酒類製造業
資本金
1000万円
創業
1818年
社員数
3人